【報告者】 シブ
【メンバー】 シブ&コージ
GWにどこか谷中泊する沢に行きたいと二人で相談してると、白川又川の十郎谷のことが思いついた。
十郎谷は、昨年のお盆休みに計画していたのだが、天候が思わしくなく、嫌な予感がしたので、前夜発して白川バス停まで来ていたが、当日の朝、止めて帰ってきてしまった。
K崎さんが亡くなれたのは、まさにその日で、あの時の変な予感がああ言う形で的中してしまった。
事故以来、沢を止めようと、真剣に思った時もあったが、K崎さんが遺された多くの著述を読んでいる内に、それはK崎さんの本望では決してないことを確信するようになった。
事故が起ったことを決して私たちは忘れてはならない。しかし、再び痛ましい事故を起こさない為には、嫌な記憶から逃れるのでは何の解決にもなっていず、むしろ事故に向かい合うことの方が大切なんだと思う。私たちは、過去を乗り越える為に、まずこの谷に向うべきだと思った。
6時を過ぎると雲の間に青空が見えるようになった。天気は確実に回復に向っている・・・朝飯を食べた後、林道に入って、ゲートまで車を走らせた。
準備した後、7時前に出発。1時間足らずの林道歩きで、十郎谷に掛かる橋桁に到着。左岸側に付いている踏み跡を辿って、入谷した。
目の前に立ちはだかるのは、団子状に積み重なった三つのCS。橋の上からも見えていた滝で、近づくと、それ程悪そうには見えず、右側を簡単に登っていけそうだ。
ザイルを出して、コージがまず登りだす。しかし、ルートは狭い上にヌルヌルで手掛かりが以外となくて、と奮闘する。コージはすべてフリーで登ってしまったが、フォローした私はスリングを足場に一箇所の人工で、滝の上に登り出た。
CSの上は両岸壁に囲まれたゴルジュになっていた。「ああ、こういう場所に来たかったんだ!」と、思わず武者震い・・・というか、二人とも寒さで本当に震えていた。
先ほどの滝の登攀で二人ともすっかり濡れていた。狭いコーナーには水流があって、ずり上がっていく時に、濡れてしまったのだ。レインコートを着なかったことを、少々、後悔。ゴルジュ内には、日差しが届かない。
浅い釜の先には、8mほどの斜滝が掛かっているが、シャワークライミングになりそうだ。「さっきは、コージが頑張ってくれたから・・・」。レインコートを着込んで、今度は、私のリードで滝を登る。
左岸から取り付き、シャワーを一瞬浴びて水流を渡り、滝の左手を直登した。登っている間は寒さを感じなかったが、ビレイしてコージを待ち受けている間、ブルブル震えていた。
次に現れたのは直登は厳しそうな滝。左手の凹角をコージのリードで登る。岩が脆く、コージがハーケン打った後、テスティングしていたら、岩がごそっと抜けて、頭大の岩が二つ落ちてきた。離れてビレイしていたので、私は無事だった。
その滝を越えると壁は低くなって、威圧感がなくなる。滝はまだまだ続くがシャワーを避ける形で、越えていく。直登できなくても、大きな高巻きをせずに越えることができた.。綺麗なナメを登って行くと、二又に到着し、そこでお昼休みにした。
ゴルジュの中にいた時は、まだ薄曇りだったが、今はすっかり晴れて、温かな日差しが、谷間に注いでいた。
コーヒーを飲んで身体を温めた後、再び、歩き始めた。
谷は、源流地帯に入ったようで、両側にはなだらかな斜面が降りてきていた。時々、植林も目に付くようになる。それから2時間ほど、小滝の続く谷を溯行していくと、いい台地を見付けたので、そこでタープを張ることにした。薪も沢山あって、焚火にもすぐ火が付いた。
前日、ジムで登っていたので、ご飯を食べた後、暗くなる前に二人ともツェルトの中に入った。時々目が覚めると、鹿の鳴く声が周囲から聞こえていた。
翌日は、薄明るくなると同時にツェルトから出て、焚火を炊いた。コージの炊いた白飯はいつも美味しい。その白飯に梅干とふりかけを乗せ、後は味噌汁というごく簡易な朝食も、谷間で食べると、この上もないご馳走に感じられた。
テン場から出発して間もなく、右岸の植林からの間伐が谷間を埋めるようになる。下を潜り抜けたり、乗り越えたりして二又まで辛抱して溯行していたが、まだまだ間伐がうっといしいようなので、見切りを付けて、右岸の尾根に逃げることにした。
尾根を這い上がっていくと、しばらくして十郎山の山頂に到着した。こんな辺鄙な山に訪れるものも、結構いるようで山名票が、幾つか樹木に掛けられていた。十郎山からは、東に伸びる尾根を辿って下山。途中、モノレールの軌道にあったので、それを辿って林道まで下山してきた。やっぱり、沢登りは、楽しい。
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