数百メートルにわたる崩壊壁が続く祖母谷大ゴルジュ。
そのゴルジュの中に立つと、まるで地獄の底にいるようだった。
なかなか天候に恵まれなかった連休。昨年のお盆以来、黒部の谷から足が遠ざかっていましたが、この9月の三連休、ようやく行くことができました。
私たちが行ったのは、祖母谷(ばばだん)。
黒部でも、黒薙川につぐ流域面積を持つ谷で、出合から3キロほどで祖父谷(じじだん)と二分し、祖母谷は白馬岳目指して突き上げる。黒部の谷では困難な方ではないと聞くが、長大な行程の中で、約400mの高巻きをせねばならない大ゴルジュが存在する。登攀力や体力、ルーファイなど、谷をこなず総合力が問われる谷である。
詳細な記録は、会報の『溯行』の発行を待ってください。こちらのブログには写真をダイジェスト版にして投稿することにします。
第一ゴルジュの出口にある8m滝。
ゴルジュ内の滝は巻きやへつりで滝を交わすことができ、
まず手始めといったところだ。
壁には赤ペンキで数字が書かれ、随所にトラロープが見られたが、
調査か何かだろうか?
第二ゴルジュ二段6m滝。
第二ゴルジュに入ると、ボルダーチックなワンムーブや激流のジャンプなど、
ダイナミックな溯行となる。
一か所だけトラバースでクライムダウンできずに懸垂下降で谷に降りる。
硫黄沢出合を過ぎて。
ちょっとしたゴルジュを過ぎて、大岩の散乱した荒れ果てた
谷間を進む。
昼過ぎから雷雲が発達してきたが、
堪え切れずにとうとう降り出してきた。
初日は、第三ゴルジュ手前の河原で幕営。
夕立の為に焚火は断念し、早々にテントの中に潜り込んだ。
この晩は、前夜の睡眠不足の為か、よく眠ることができた。
2日は4時半に起床し、6時前に幕営を後にする。
第三ゴルジュの入口。
この3m滝を越えると、両岸の圧倒的な側壁の合間に、
ゴルジュの盟主40mが立ちはだかる。盟主の姿は敢えてここでは伏せておく。
謙虚に左岸を巻くことにした。
そして、地獄の底へ。
約400mの大高巻きを行ない、奇跡的に見出されたルンゼが、
大ゴルジュへの侵入を許してくれる。
高巻き中に見た、赤茶けた崩壊壁が聳える祖母谷大伽藍は、
圧倒的な光景だった。
地獄にて。
地獄の谷底にある滝は、錆ついたような赤茶色をしていた。
両岸から崩れてきた岩屑が散乱、堆積し、
賽の河原とはここだと思った。
死の回廊。
赤茶けた大ゴルジュを抜け出すと、
白い側壁が伸びた先に、白亜の滝が掛かる。
しかし、まだ生き物を寄せ付けないのか、
動物の死骸を幾つか目にした。
硫黄の臭気に混じって、死臭が鼻を突く。