槍沢ババ平対岸の大滝登攀

2024/7/25~7/28 槍沢 ババ平対岸の中央大滝登攀・左俣大滝登攀

メンバー:シブ&コージさん、N-GAY(記:感想)

7/25 雨 あかんだな駐車場4:50⇒上高地⇒12:00ババ平キャンプ場

7/26 くもりのち晴れ 6:00中央大滝登攀18:00

7/27 快晴 6:00左俣大滝登攀14:30

7/28 雨のちくもり ババ平キャンプ場5:20⇒上高地⇒11:30あかんだな駐車場

 

槍沢のババ平は氷河の末端に堆積した岩や土砂で平になった地形を利用したキャンプ場である。谷の断面がV字かU字かで氷河が流れていた事がわかるそうで、キャンプ場から見て槍沢の右岸側に横尾尾根の断崖と左岸側に赤沢山の断崖が見え左右の景観がU字に開け氷河であったのがわかる。その右岸側に三俣の沢があり、中俣の中央大滝120mと左俣大滝150mを登攀する機会をいただく。

過去の記録も少なく私にとっては挑戦的な山行で貴重な経験を積むことができた。今回の山行を企画され無事完登できたのはシブ&コージさんの功績であり同行させていただいた事に対して本当に感謝しかない。楽しさ満載の2本の大滝を成瀬陽一さんが初登されてから登られていないのはもったいないと思う。また貴重な詳細記録はシブ&コージさんが公開して頂けると思うので私からはこのブログを通じて感想を記す。

出発当日、大雨の中で装備の準備をして4:50の始発のバスに乗り上高地へ到着。6/30~7/1にかけて400㎜を超える大雨で六百沢の土砂が崩れ上高地と明神館の間で梓川左岸の登山道が通行止めになっており、槍沢の登山道も7/12から暫定的ではあるが復旧され、ここまでの被害が出たのは1995年の大雨の時以来だそう。一時は代替案も考え、どうなることかと思ったが12:00頃、無事にババ平のキャンプ場に到着し始めて対岸の大滝を見て、この瞬間を長い間、待ち望んでいたような感慨深い気持ちになる。

2日目、中央大滝の登攀を開始。気合十分に6:00頃にキャンプ場を出発。中俣と右俣が合流する下流側左岸に雪渓が残る。1ピッチ目は大きいスラブ滝の途中右岸から段階状を登り落ち口を左岸側へ渡り安定したテラスでピッチを切る。「ん?あれ?」まだイメージに体がついてこない。2ピッチ目は右岸へ渡り難なくフェース状を登る。3ピッチ目は灌木帯を10m登ったところからブッシュ帯をトラバースし滝身の左を登り落ち口から左岸へ渡ったテラスでピッチを切る。一番緊張が強いられた場面であるが細かくハーケンを効かせコージさんのリードで安定した登りを見せていただく学びが多い登攀となった。4ピッチ目と最終の5ピッチ目はリードを任せていただいた。スラブ状を登り巨大なえぐれの手前からブッシュ帯の中に入り灌木で中間支点を取りながら登る。ここはロープいっぱいに伸ばしたい所である。安定してピッチが切れそうな所を探すが無く40mほど登った灌木で一旦ピッチを切る。5ピッチ目は帯状小ハングをそのままブッシュ帯から越え滝身に出て中央大滝の高差120mの落ち口に立つ。対岸の赤沢山の断崖からU字に大きく開けたババ平。大きく開けた青空。誰もいない景観をしばらく独り占めする。最高のご褒美をいただいた。下山は落ち口からは3つの斜滝を登り左岸の尾根からブッシュ帯にはいる。下山のルーファイも楽しい。

3日目、左俣大滝の登攀開始。昨日の疲れは無い。6:00頃にキャンプ場を出発。1ピッチ目のリードを任せていただく。スラブ状の滝左岸を難なく登り、次のハング滝を前に登攀ラインに迷う。逆層で上部が少しハングしているが下部のハングを乗り越せばなんとかなりそうと少し曖昧なプランで取付く。一つアブミを掛けるが次の手が無い。そこで二つ目を掛けるためアブミが吊り下がっている部分を股で挟み込み両足で立ち込み両手をフリーにしてハーケンが効きそうな所を探す。見つからない。時間ばかりが過ぎる。1ピッチ目からこれ以上時間をかけるわけにいかないと思い一旦ピッチを切りシブ&コージさんにも登ってもらう。ここはコージさんにリードを変わってもらうがハング帯でのエイドクライミングの引き出しの広さに当然のことながら脱帽。とても学びの多い登攀となった。3ピッチ目と4ピッチ目もリードを任せていただく。3ピッチ目は滝身の左岸スラブ帯を快適にクライミング。左からのルンゼを見て右へ曲がりロープをいっぱいに伸ばす。ビレイ点で何かずっ~と滝の中から視線を感じる。滝の中から飛び出た岩がまるでゴリラのようである。この「ゴリラ滝」(N-GAY命名)から4ピッチ目をリードする。滝身とブッシュ帯のコンタクトラインを快適にクライミング。ここもロープいっぱいに伸ばす。5ピッチ目はコンテでバンドまで上がる。最終の6Pピッチ目はコージさんがリード。バンドを右岸に渡り直上するラインを選択。激シャワの中へコージさんの姿が消えていく。「かっこいい~!」シブさんの的確な判断とコージさんの登攀力の強さは永遠のヒーローでありシブ&コージさんはパートナーの姿として憧れの存在でもある。そして、ついつい何でも真似をしてしまうのである。登りきった先には岩壁の穴から水が湧き出している神秘的な景観。昨日に引き続き最高のご褒美をいただいた。右岸側の尾根から下山を試みるがブッシュ帯の灌木を手掛かりにクライムダウンといった感じである。取付きのスラブ滝を懸垂。その後、ブッシュ帯の草藪を掻き分け下っていると人の踏み跡にでる。「なんでこんな所に人が入ってんのかな~」「おかげで歩きやすいな~」などと言いながらしばらく踏み跡に沿って下り、左に折れ曲がった10m先に「えっ!」真っ黒いものが…「くまや~」と大きな声でコージさんが叫ぶ。「ピー!ピー!」とシブさんの笛が鳴る。なんかの本で読んだ事がある。熊と出会った時は目線を外さず静かに熊との距離を開けると…。熊は一目散に逃げてくれたが、さすがにここは真似できないと思った。

今回の山行へ同行する話をいただいた時は本当に自分でいいのかと思った。でも二つ返事で同行を希望する自分。絶対に迷惑をかけるわけにはいかないと自分なりにトレーニングを積んできた。いやトレーニングに付き合ってくれたパートナーに感謝しなければならない。そしてなによりも自分にチャンスをくれたシブ&コージさんに感謝である。

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2件のコメント

  1. 忙しい中、さっそく投稿有難うございます!
    ババ平対岸大滝、素晴らしかったですね。次は秋の山行お付き合いお願いします😉

  2. 早速レポートありがとうございます。
    当日のことがリアルに思い出されます。
    あの岩、ゴリラ岩だったんですね!私は熊さんに見えました!😁
    ボッカも本当にありがたかったです。3人でやりきった山行でした。
    また、よろしくお願いします。