白山 大畠谷(オバタキタン)左又大滝登攀

 

2023年9月16日-17日

メンバー:シブ&コージ、ノブリン(記)

黒部かどこかの大渓谷に同行したい‼とシブさん、コージさんにお願いしていた山行だ。

黒部、越後、谷川岳などが候補に挙がっていたが、天気予報に右往左往した末、直前になって白山 大畠谷(オバタキタン)左又大滝登攀を決めてくれた。

今まで3回ほど図書館で借りて読んでいた大西良治著「渓谷登攀」だが、時間がないので近所のモンベルで今頃になって購入。

該当ページを再度読んでときめいた。二又の大スラブ帯‼とてつもない絶景だ。マジでここへ行くのか。

シブさんコージさんにとっては6年ぶりのリベンジで、前回は増水と悪天の中、無理やり突っ込んで二又まで行けず途中敗退したらしい。

そして、150mの左又大滝は、わらじのレジェンド川崎実氏、根来氏、菅氏によって初登が果たされた大滝とのこと。

自分に登れるのか。わらじの会の一員になって3年半。できるはずだ。偉大な先輩たちの後を追ってみたいという気持ちになった。

 

9月15日大阪出発ー桂湖キャンプ場手前で前泊し、早朝5:30起床。

6:23大畠谷入渓。水がかなり少ない。

 

ほどなくして2段25m滝が現れた(7:20)。ここは手前に戻って左岸を大高巻き。念のためロープを出した。4ピッチほどでかなりの時間を要した。途中、ロープを使わない別パーティ2組が追い越していった。

 

13:25  6m滝で先行パーティ2組に追いつく。コージさんのリードで右フェースを登る。細かい手がかりなどがあるにはあるが、向きが悪く難しい。

 

14:10 1日目のハイライト2段40m滝までやってきた。先行パーティが手前の右岸を高巻いていたが、「シブちゃん目線」で左岸を選択。コージさんもやる気満々。

しかし出だしの1ピッチ目が悪いうえ、ハーケンがなかなか効まらない。結局、泥壁にハーケンを2本打ち込むコージさん。はじめて見ましたよ泥壁ハーケン。

このように機転がきくのも強靭な下半身があってこそ。下半身で上体を保持し、両手をフリーにすることで、落ち着いて支点構築ができるのだ。

この技術は登攀系沢ヤにとって必携の技術と言えるだろう。この技術を「コージー保持」といいます。

 

2ピッチ目で無事落ち口へ。

 

2段40m滝を超えるとすぐに左又大滝が見えてきた。

 

16:30二股に到着。写真は薪を集めるサイヤ人に変身したスーパーシブちゃん。

 

大スラブ帯の大劇場に囲まれての絶景谷中泊だ。明日に備えて19:00過ぎに就寝。

昔、川崎さんがどのような気持ちでこの場所に立っていたのかを想像しながら明日を迎えるシブ&コージであった。

 

4:30起床。徐々に朝日に染まる岩壁。同時に闘志が湧いてくる。6:13出発。

 

大滝直下でオブザベ。上部は左岸の方が緩い?「シブちゃん目線」が発動した。

 

6:40登攀開始。1Pと2Pは右岸を私がリードさせてもらった。簡単ではあったが、岩壁がボロボロで、ハーケンを打ってもすぐに剥がれ落ちて少し焦った。

落ち着いて対処できないところは「コージー保持」が未熟なせいだろう。おそらくハーケンはあまり効いていないので、絶対に落ちられない。

落石にも細心の注意を払って2ピッチでなんとか水線近くまで登ってきた。

 

写真は対面する右又ゴルジュを登る別パーティ(別パーティ2組とも右又ゴルジュを選択)。あちらも落石と支点構築に苦労しているようだった。

 

次の写真は同時刻に右又を登攀した宇都宮の山岳会グループ・ド・ミソジさんからいただきました。2ピッチ目終了点の私(中央少し下)と見守るシブ&コージ(左下)

 

左又大滝の上部。天気が良すぎて、白い岩肌がまぶしい。

 

3ピッチ目でコージさんのリードで左岸に移る。この登攀ルートの記録は見ない。

 

コージさんのリードで、4ピッチ目で大滝の落ち口に。

 

9:50登攀完了。落ち口にて記念撮影。最高に気持ちいい登攀だった。

 

大滝の上流はミニゴルジュがつづき、すぐに源流の雰囲気となる。

11:00頃、12m滝で行き詰まり、右岸尾根を目指して詰め上がることにした。

最初、源流支谷の涸れ沢沿いを快適に詰め上がったが、行き詰まったところで白山の洗礼を受ける。藪漕ぎだ。

約2時間半、強烈な藪漕ぎだった。これが一番の核心だった。

14:00登山道に合流。登山道を下山し、18:00駐車地に戻ってきた。

最後の1時間はシブさんにロープを持ってもらったりなど、歩荷力の無さを痛感した。

その後、くろば温泉で汗を流し、南砺ポークステーキ定食を食べながら、皆で健闘を称えあった。

尊敬する先輩沢ヤお二人と大渓谷溯行に行けて大滝を完登する至福の2日間であった。歩荷トレやんないとなあ。

 

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6件のコメント

  1. 一番の難関が藪漕ぎというのが正しい評価でしょう。谷溯行というのはそういう物ですがが、積極的に登ると意外に登れる谷だった記憶があります。同行した川崎実さんの言葉に『なんとはなしに登れる谷です。』が。それだから楽しい谷でした。

    • 根来さん、コメント有難うございます!最初に左俣行かれた時の壮絶な溯行は、わらじの歴史でも特筆するものだと思っています。私は、色んな意味で大畠谷行くなら左俣!と、思っていたんで、感慨深いものがあります。

  2. さっくの投稿有難うございます!
    本当に素晴らしい渓谷でしたね。いつも大畠谷は黒部あかん時の代替案的存在で申し訳ないくらいです。
    今回は、天候、水量、雪渓とコンディションを見極めれたことが、良かったです。雪渓処理に苦悩したり、雲行きに気を揉んだり、また水量多ければ(かつてない程の水量の少なさだったと思う)、ストレスフルな溯行となったでしょう。いつもは、こんな上手くは行かないと、肝に銘じておいて下さい。

    • いくつかある候補地の中から「大畠谷」に行けて本当に良かったです。この時期の最高のタイミングで行けたのも運命だったのかもと思うぐらい素晴らしい体験でした。大きなトラブルもなく溯行・登攀ができたのも、お二人の経験からくるものが大きかったと思います。自分にとってはこれを機に大渓谷への扉が開いたように思います。
      最後ロープ持ってもらってありがとうございました。歩荷が課題なので、歩荷トレもやっておこうかと思います~。

  3. 大渓谷いいでしょう!年に何度も行けないからこそ、次はどこ行きたいなっと想像してしまい、病みつきになります。
    大渓谷を溯行する経験が次へとつながります。また、行きましょう!

    コージ―保持、新しいネーミングありがとう!

    • いくつも候補を挙げていただきましてありがとうございました。コンパスの下書き3、4つほど代替案を用意しているところも凄いなあと思いました。大渓谷めちゃくちゃ良かったです!本当に行けて良かったです!(^^)!次は黒部に!(^^)!

      「コージー保持」…「事故」を反対に読むと「コジ」なので事故を防ぐという意味が語源だとする説も存在します。
      (民明書房刊「沢登り技術大全」より)