日付:2025年11月15~16日
メンバー:シブさん、コージさん、maaasan、さくら(記)
大阪わらじの会の会報『溯行』10号に
宇筒井川妙呂地谷・ 本谷の記録が記されています。
この、大先輩方が残してくださった51年前の記録以降は、わらじの会としての情報は更新され ていません。
人もあまり入っていないようです。

『沢は年々、いや、日々、変転して行くものです。』とシブさん。
現在の谷の様子はどうなっているのでしょう?楽しみです♪
これぞ冒険だなぁ!と、わくわくしました。
お天気は、古座川町で19/9℃、2日間とも晴れの予報。
朝7時、道の駅『瀧の拝太郎』で待ち合わせ。
林道宇筒井線の終点に車を停め、スタートです。
駐車地にはこの先通行止めの看板が有りましたが、 その後も暫くは車の轍のある林道を歩きました。

妙呂地谷(左手)と本谷(右手)の出会いを左へ進むと、 直ぐに対岸に妙呂地観音様の小さな赤い祠が見えました。
堰堤を渡ってお参りに行き、溯行の安全をお願いしました。
実は、妙呂地か妙呂寺か、記録にどちらも有って謎だったのですが、お賽銭箱に『地』の文字が使われているので
妙呂地が正しいのだろうと言う結論になりました。



その先もさらに整備された林道歩きで、かなり距離を稼いだ感じです。

出会いから1㎞程でようやく入渓しました。

すぐに小滝が現れましたが釜の奥は深そう。

沢床に降りると、左岸が大きく崩れた所で沢が逆『くの字』 に曲がっています。
『南紀の沢はよく蛇行している』と、コージさんに教わりました。








曲がる度に、ちょっとした廊下、ミニゴルジュ、小滝の連続帯、 そして開けたゴーロ帯、と変化が有り、面白いです。
澄んだ水の中には魚が沢山泳いでいました。
この遡行はコージさんが溯行図を記録しながら進むため、 立ち止まる機会が多くて、 私にも景観をゆっくり楽しむ余裕が持てました。
谷の中には昔林業が盛んだった頃の名残りが沢山有りました。
苔むした炭焼釜跡、 トタンや一升瓶や割れた茶碗などが散らばっている飯場跡、 朽ちた橋など、何箇所も見つかりました。
炭焼釜跡の側に椎茸の駒打ちをしたホダ木らしきものまで!
昔の人が様々な山の恵みを活かして、 この谷の中で活動していた様子がしのばれます。


遡行中に大木に出会うのも楽しみのひとつ。この巨木はトチでしょうか。

やがて、この谷で唯一の大滝が現れました。滝の上部が午前の陽の光に照らされて、とても綺麗でした。

過去の記録では「右岸を巻く」と有りましたが、今回はシブさんコージさんの判断で少し戻った所から左岸を巻きました。下部はフリーで上に登り、 上部はロープを出してもらって2ピッチ。トラバースしながら滝に近づき、 滝の落ち口付近は水際を上がります。リードはコージさん、 ビレイと2番手はシブさん、次に私、最後はmaaasanが。 ロープが有ってもトラバースは怖く、 そして落ち口直下の岩をまわり込むのは更に怖かったです。沢山経験すれば怖さも薄れて行くのでしょうか?
高巻きのため、まず直登。


滝の方へトラバース中のコージさん。

緊張しつつも『足』『足…』と呪文のように自分に言い聞かせる私(笑)

落ち口上でフォローのビレイをしてくださるコージさん。

大滝を越えた先は、再び穏やかな渓相。













小滝、ナメ、ミニゴルジュ、などを楽しみ、やがて明るく開けた林となり、ここでもひときわ目立つ大きな木。
『これは、この場所の主ヌシやなぁ』とコージさん。
この付近の主と呼ぶにふさわしい栃の巨木がありました。

付近は岩場っぽくなり水線が細くなり、 伏流となった沢をさらに登ります。
地形図では正面はかなり立っているはず。
当初は右に逃げる予定でしたが、時間に余裕があったため、 そのまま詰めて様子を見に行ってみる事になりました。
だんだん傾斜が急になり、 やがて再び水の音が聞こえ始めました。


足元に細い水線が現れ、 とうとう正面に岩の裂け目のような大滝が見えました。
深い縦の溝の奥を水が流れ落ちる、個性強めの姿です。
ここは左岸を巻く事になりました。
リードはシブさん、ビレイと2番手がコージさん、3番手が私、
半分まで頑張りましたが、やっぱり残り半分は難しく、『 ゴボウしても良いですかー?!』と叫ぶ私。。。
こう言う所でロープを出してくださるからこそ、 私のような者でも絶景を楽しませてもらえる。。。 本当に本当にありがたい。


フォローのビレイをしてくださっていたジブさん、頼もしく見えました。

maaasanがラストに回収して登ってくれます。
さて、この壁を登り切ったら、後は右手の尾根に乗り、 654mピークから伸びる稜線を暫く伝って、良さそうな場所から谷へ下ります。 この斜面は沢山木が生えていて、 急な傾斜でも比較的降りやすかったです。

(上の写真の奥が654mピークです)

沢床まで150mくらいの標高を降りると、 ここからは本谷左俣の沢下降です。
連続する小滝帯、ナメ床、 被っている小滝など次々に出て来てこちらの谷も飽きません。 むしろ私はこちらが好きかも。

濡れないように小さく巻いたり、へつって降りましたが、 夏なら飛び込みたくなりそうな釜も有りました。


本谷右俣との出会いに14時半頃到着。 穏やかな渓相の広めの河原で、ここを今夜の泊地にしました。
整地を済ませ、タープとテントを張り終えたら薪拾い。4〜 5日雨が降ってないので木が乾いており、 火がつきやすかったようです。
いつも1番に飛び出して、 薪を沢山ザックに詰めて戻って来てくれるシブさん(感謝)。


11月の谷は驚くほど暗くなるのが早く、 焚火を囲み始めた15時頃にはもう薄暗くなって来ました。
焚火で炊いたご飯やお料理は最高に美味しくて、 火を囲みながら贅沢な時間を過ごしました。





そして水の流れる音しか聞こえない、 静かで真っ暗な沢の横で眠りました。

翌朝は6時起床。
焚火で炊いてもらった少しお焦げ入りのご飯、 何も乗せずに食べられる程美味しかったです。
全て片付けて、7時過ぎに本谷の下降の続き、開始です!






こちらの谷も、大滝がひとつ有りました。

実は、この滝は、後で分かった『発見』がひとつ有りました。
遡行して、見てみてこそのお楽しみ ♪かな。


飽きの来ない美しい渓相にウキウキしながら進みました。


左岸側が大きく崩れていた場所、 沢床には上から落ちて来たであろう大きな岩が、 絶妙なバランスで乗っていました。






本谷の方も炭焼釜跡がいくつか有りました。
特にここは、釜の真上に根を張って成長した木にびっくり!

その後、広めの中州が有る区間を歩きます。
中州の事をインゼル言うのだと教わりました。
トチとヤマボウシ

maaasanが見つけた実。イチジクに似ているけど、君は誰?

厳しい環境に根を張る巨木をコージさんが見上げます。

吊り橋や杣道に掛かった橋は、朽ちていて、歴史を感じます。




やがて穏やかな河原が続くようになりました。


妙呂地谷との出会いに到着しました。
maaasanは魚を見ているのかな?とにかく沢山います。

脱渓。 林道を駐車地まで歩きます。

途中の堰堤を見下ろします。水は美しいブルーで、 夏なら飛び込みたいところ。

宇代呂谷(うしろたに)川の橋を渡ってゴール。



2日間、お天気にも恵まれて、 沢での貴重な時間を楽しませていただきました。
シブさん、コージさん、maaasan、 大変お世話になりました。ありがとうございました。
