西山谷遡行  六甲山系 西山谷大滝など登攀 2021年2月2日

正しく恐れて西山谷

 

西山谷には10回以上登っていますが、沢足袋着用して、沢登りとしては初の遡行です。もう登山靴を持っていないから仕方ないのですが、結果、沢足袋のほうがずっと楽しく「沢らしく」登れました。巻き道はよく踏まれてます。登山靴で登る西山谷はいわゆる熟練者向けの、かなり危険な登山ルートという範疇です。死亡事故数件含め、遭難の多い谷です。

裏山と言える場所にいくつも谷があり、それなりに課題があるというのは、きっと恵まれているのでしょう。

住宅地から西山谷に入ると人工的な音が全て消え、冬の谷らしい凛とした空気に変わります。日常生活のすぐ隣に命のやり取りができる自然があるのが、西山谷を含め、六甲の谷の魅力かもしれません。大げさに言えば、自分の命を賭する自由が待っています。これは人が味わえる自由の、最高級のものだと思います。

とはいえ死ねない。独りだとどうしても、10センチの落下、5センチのスリップが、死をしっかり予感させます。99%大丈夫という登り方はできません。それを100回行えば、確実に一回は死ねますから。

さあ、いつものように堰堤を越えて

F3、10メートル。右側水線沿いに慎重に登れました。まあまあ濡れました。

F5「ふるさとの滝」9mは狭いゴルジュに落ちる直瀑です。下部が登れても上部の処理がわからずスルー。帰って調べたら、一度巻いてから支点構築し懸垂下降してから登っている人がいて、3回チャレンジして失敗、との記載がありました。ああ、やめといてよかった。

とりあえず取り付いて観察しても良かったけど、今回のターゲットではないので、ドシャワー嫌さに逃げました。上部ステミングで水流から体を浮かせて、さてどうするねん。体力が持たん、でも戻られへん。というタイプ。下にマット欲しい課題です。

いくつも滝がある(F19まである)楽しい西山谷ですが、今回のテーマはこの西山滝17メートル。時間をかけて眺めても、水流で不明な部分があり諦めてとりあえずスタート。二段目下部の取り付きさえこなせば行けそう。冷たいので早く越えたいけど、ビビリな私はクライムダウンが可能かどうか確かめながら登るので時間がかかります。冷え冷えになって、でもほぼ予定通りの手順でクリア。夏ならもっともっと楽しいはずです。2月の初登やろなぁ。自慢にならない家族に絶対に見せられない、とってもイケナイ行為です。

二段目の下部。大変にちべたいです。

「ミシンを踏みつつセミになっていた」という表現でいいのかわからないけど、以前に登山靴でそういう状態になり登れなかった恐ろしい「愛情の滝」、そして西山谷最難といわれるチョークストーンのF19まで行くつもりだったけど、凍えてやめました。

それにもう、お腹いっぱい。正しく恐れるというテーマをクリアしたので帰ります。

ちなみにF19は、以前は左岸岩角にテープスリングをかけて体を振って、チョークストーンに乗るというぶざまな越え方でなんとかクリアしましたが、違うアプローチがあるかもと思っています。登山ルートなら左岸巻きです。

西山谷はどこから撤退しても急峻なので、早々に「マルゴの森林作業用スパイク地下足袋」に履き替えて天狗岩東尾根を目指しました。

 

これまで何人かに聞かれたのでちょこっと紹介。こちらの足袋は、ネオプレーンの先割れ靴下をインナーにして、アプローチシューズ(登山靴)として常用しています。重量は900g台。23センチからあります。かさばりません。とてもいいのですよ。騙されたと思って試してください。騙されてもよい価格です。長持ちします。必ず樹脂ではなく金属スパイクのものを。

実は、沢の友人も、他の沢の会の人も、わらじの会の人も、アプローチシューズなるものを使わないのことにびっくりしてたんです。終始フェルト靴のままで、こけても何事もなかったように立ち上がる、その蛮行よ!!

さて性能はというと(接着剤風に…)

土と、土の急斜面◎

砂・砂利◎

落ち葉◎

松の葉◎

木登り◎

濡れた木の根、乾いた木の根◎

ツルツルの木の幹や倒木の乗っ越し◎

苔◎

固い雪・氷◯

岩登り◯

凹凸のある岩の上◯

ツルツルの一枚岩△

泥付き△  ( 踏み込めば◯)

 

登山靴では怖い立った斜面でも、ウソみたいに直立歩行可能です。鉄製のスパイクが土と、土斜面の細い根をちゃんと噛みます。こはぜ10枚で、スネの太さに合わせて締めることができます。アプローチや下山で、フェルトを消耗せずにすみます。でも、その渋いフォルムからか、私の工事用白ヘルメットとの組み合わせでは、一般の登山者さんに「こんにちは」ではなく、大体「ご苦労様です」と挨拶されます。

ちなみにメーカーの名前「マルゴ」とは、五大陸を制覇する者、という意味です。箱の表に「男たちの熱い挑戦」と大きく書かれたフェルト地下足袋と同じメーカーです。社長!、熱すぎです!

(宣伝しときましたぜ、社長)

 

 

 

 

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