雲音谷と言うと、「請川を過ぎて、正面に白い雪を被つた果無山脈を見て皆一斉に声を上げた」という、川崎実さんによる『溯行8号』の名文が思い出されます。
しかしながら、私たちが雲音谷に足を運んだ動機は、在りし日のわらじの先人たちの足跡を懐かしんでということではなく、大峰の谷に入るつもりだったのが、地図を家に忘れてしまうという大チョンボを仕出かした為でした。
そこで思いついたのが、雲音谷です。十二滝谷と同じ尾根を下山に使えると考えていて、ここなら地図がなくても無事に下山できるだろうということで、急遽、計画を変更することにしました。
雲音谷は、十二滝谷や橋ノ谷と同じ果無山脈を水源に持つ、十津川の右岸から入る谷で、八木尾谷より一つ北から入ります。
雲音谷随一の30m滝。
【地形図】 「伏拝」
【日程】 2014年6月7日
【メンバー】 シブ&コージ
旧国道に入り、その名前が記してある橋に駐車し出発します。
最初は、土砂の堆積した蔓の垂れ下がる鬱蒼とした谷間を進んでいきます。曇り空のせいか、陰鬱な印象の谷です。
小滝がちらほら出てきたな、と思うと、30mの滝が現れます。が発達していて、大巻きさせられそうです。左岸から巻き、バンドを伝って谷に戻ろうとしましたが、側壁が立っていて、懸垂でなければ頭に立てそうに見えません。その上の滝を越えたところで、木の根っこを掴んで谷に降り立ちました。右岸には導水管が伸びていて、小路もありました。このゴルジュ、なかなか見物です。
この谷は小さな滝にもしっかりした釜があって、へつりや巻きを選ばないとすると、渡渉か、ちょっとしたや泳ぎで滝に取り付くことになります。
こういう谷は水を浴びて積極的に登っていくべきですね!・・・しかし、パートナーはこの日、寒いと言って消極的です。登ってみると以外とシブい滝もあって、コージに上からお助けを出してもらう場面も。。なかなか面白い谷なんですが、倒木が谷間を塞いでいて、ちょっと残念です。
左岸から滝の掛ける枝沢が入るところから、またちょっとしたゴルジュとなります。私たちは右岸のリッジから巻いたのですが、左岸からの方がすんなりこの滝の頭に立てたのかも・・・。トラバース後、クライムダウンし一旦頭に出ますが、その上にも直登できない滝が続いていたの戻って再び巻きました。
しかし、谷はこれでもかという風に、滝を休むことなく掛けます。もう、ここで大概、厭きてきます。
雨も止まないし、倒木は相変わらず、うっとしいのですが、次から次に出てくる滝に、引き返す理由を見出せず、つい進んでしまいます。
滝は兎に角多いのですが、何か一本調子なんで、厭きてくる!
水が切れたところで、右手の植林の斜面に出て、尾根を辿って果無山脈の主稜に到達しました。そこから、南に伸びる雲音谷左岸の尾根を辿って国道を目指します。
しかしながら、最後にのり面の上に出てしまいます。何とか落石ネットを攀じ登って旧国道に降りることができましたが、ちょっと行けば階段がありました。後で調べると、下山は、右岸の熊野古道のある尾根を皆さん使っているようです。
コージは、地図がないせいか、今回は何かとマイナス発言が多いようでした。今回は、忘れてしまったのですが、たまには、地図なんかうっちゃって沢登りするのもいいかもしれませんね。