【日程】 2013年5月4日~6日
【場所】 台高 往古川・真砂谷 【二万五千分の一地形図】 「引本浦」「大杉峡谷」
【メンバー】 コージ&シブ
2013年GWの山行は、真砂谷の溯行を計画。この谷には八町滝という100mを超える大滝や60mほどある奥八町滝があり、それらの登攀を絡めた二泊三日の山行を、欲張りにも考えていました。
前日、夜勤明けの私は、コージの運転でしっかり仮眠をさせてもらいます。夕刻、大台林道に到着し、缶ビールを開けて前夜祭。早々に眠りに着きます。
新車の軽自動車では出合まで入る勇気がなかったので、15分ほど林道を歩きます。林道が大きく曲がるところで斜面を下って、往古川の川床に降りつきます。
真砂谷は出合から大岩がゴロゴロしていて、巻き越えたり、乗り越したりしながら進んでいきます。支流を二本、右岸から迎えた後、谷が右に曲がるところで、ようやく20mの滝らしい滝が出現。頭に伸びる小尾根が見えた右岸を巻くことにします。ザイル1ピッチでその小尾根に登り出て、簡単に斜面下って谷に戻ることができました。
二又の後、岩間を割って流れるような20m滝が現れます。ここも左岸巻きを選択。ぼろいルンゼを攀じて樹林帯に出、滝身へとトラバースしますが、頭に出るのは悪そうなので引き返して、凹角を登って小尾根に出ます。小尾根を伝って20m滝の頭へと向かってみますが、切り立っていて降りるのは困難そうなので戻って、次の20m滝を超えた岩棚に降ります。目の前には深い釜を湛えた美しい10m滝が佇んでいます。これは右岸をトラバースして越えることができました。
左右に大岩を持った2m滝は、左手の岩に乗り、ハーケンを決めてアブミで突破。岩間の滝を越えて行くと、谷の両側に大岩があり、その上に巨木が門扉のように生えている光景に目を奪われます。前方に奥坊主の異様なピークが見えてくると、谷は傾斜を増し、家のような巨岩が谷を埋めるようになります。
水の流れのない枝沢を右岸に見送ると、左岸に大きなが聳え立つのが見え、いよいよ核心部へ入って行きます。それに見とれたのか、コージがスリップして、大きく転倒。頭から落ち、しばらく起き上がらなかったので、心配しましたが、どうらや溯行は可能のようなので、一安心。先ほども、ひどく転んで肘を怪我してたのですが、二度もそんなに転ぶなんて、いつものコージとちょっと様子が違います。それでも元気なコージが、声を上げるので見上げると、八町滝が岩壁の遥かな高みから水を流れ落としている光景が目に入りました。
容易に八町滝の前に立てるのかと思えば、家ほどもあるCSが行く手を阻んでいます。CSの左側に掛かる20m滝をまず私がザイルを出して、抜け口まで登ります。シャワーも浴びて、ブルブルしながらフォローのコージを待ち受けます。抜け口は被っている上に岩もボロいのですが、コージのリードで突破。ここを抜けると、目の前に、八町滝が水煙を上げて聳え立っていました。
八町滝は広い岩壁を両岸に従えていて、オーバーハングした岩棚から水流を漏斗のように注いでいます。その右岸には舞台のような大テラスがありました。
私たちはルンゼを少し登り、右岸の樹林帯から巻いて、その大テラスに一旦、出ました。大テラスからは太平洋を見下ろすことができて、最高の展望台です。行動食を取りながら滝を眺め登攀ルートを考えたりしました。
再び右岸の尾根に戻って高巻きます。巻いている途中、人の声が聞こえるので、探してみると、CSの下部辺りで動いている人影が見えます。どうやら、他のパーティも入っているようで、声を掛け合いながら登っているようです。さて、私たちは、とうとう岩壁に行き詰ったところでザイルを出し、左上するバンドに取り付きます。傾斜もキツくて、灌木や根っこを掴んで這いつくようにして登って行くと、ようやく尾根に出ることができました。
八町滝の上は、小滝を掛ける至って穏やかな渓相で、そこで見付けた平地にツェルトを張ることにしました。薪も集まり、今年初めての焚火を囲ん
での谷中泊。焚火の前は暑い位だったのですが、ツェルトに戻るとシュラフを持ってきたにも関わらず寒くて寒くて、その晩はほとんど眠ることができませんでした。
での谷中泊。焚火の前は暑い位だったのですが、ツェルトに戻るとシュラフを持ってきたにも関わらず寒くて寒くて、その晩はほとんど眠ることができませんでした。
翌朝は、インスタントラーメンの簡易な朝食を摂ります。私は気分が重かったのですが、コージの「行くで!」という言葉に、気を引き締め直します。巻いた右岸を懸垂2ピッチでテラスに降り着きます。降りている途中、昨日見たパーティーと出くわし、「どこから来た?」など少し言葉を交わしました。昨日は滝の下でビバークしたのでしょう。
テラスで行動食を取り、安易そうな1ピッチ目は私がリードで登ります。本当は1ピッチでバンドまで辿り着くはずだったのですが、ハーケンをコージから受け取るのを忘れてルンゼの手前でピッチを切り、コージを待った後、再び、バンドを目指すことになりました。
砂利の乗ったバンドまで辿り着き、コージが登ってくるのをビレイしていると、突然、ガラガラという大音響がします。何か起こったのか瞬時に察知した私は、思わずザイルを握る手に力を入れます。しかし、それほどテンションを体に感じなかったので、あまりフォールしなかったのでしょう。「いた~」という声がしたもの、すぐに登ってきたので、ほっと胸を撫で下ろしました。コージが持っていた岩が、足元から剥がれ落ちて、コージがフォールしたのでした。
それでも、コージの戦意は落ちず、3ピッチ目のリードに向かおうとしますが、すっかり気分がダウンしてしまった私は、引き返すことを主張しました。コージも昨日からの転倒で嫌な予感がしたのか、私の意見に同意し、そこから撤退することにしました。
再び右岸を高巻いて大滝の頭に立って、そこから沿岸の漁村やその先に広がる太平洋の青い海原を眺めながら、行動食を摂りました。後ろ髪を引かれる思いはあったのですが、テン場に戻ってデポした荷物をピックアップし、八町滝を後にすることにしました。
CSを越えると二又で、右の谷に入ると15m滝が現れます。左岸を巻き、その上の滝を右手から超えると谷はゴルジュとなって、細長い淵の先に滝が掛かります。右岸を巻いてその滝の上に出ますが、その先にCSがあるので再び右岸を巻きました。
熊笹を掴んで谷床に戻ると、八町滝で出合ったパーティがそこにいました。釜の先に20m滝があり、リーダーの方が、左岸の凹角を登って突破している最中でした。コージは待つのが嫌なのか、「右岸が巻ける」とか、滝の右手を登ろうとザイルを出したりしますが、結局、先行パーティが登るのを待つ方が早く、彼らが登った後、同じ左岸の凹角を登って、その滝を越えました。
その上は河原が広がり左岸には穏やかな尾根が降りてきていますが、その先にはが見え、奥八町滝と呼ばれる60m滝が枝垂れ状に流れを落とす姿が見えました。滝の前まで行って、しばし、見とれます。先行パーティは、もう巻いてしまったのか、姿を見ることができませんでした。
この高巻きは、右岸の左上するバンドに取り付きます。バンドを少し登ってから右手から岩場を乗り越し、樹林帯を登ります。岩壁に突き当たったところで、滝身へとトラバースし、最後は高度感あるトラバースで頭に躍り出ました。奥八町滝の頭からは、奥坊主尾根の山並みの先に太平洋を見下ろすことができて、真砂谷の溯行の最後に、最高のご褒美を頂いたようでした。
二又を右手に取ると、両岸は台地となって石垣跡が見え、源流域に入った感があります。そこで見付けた平地にツェルトを広げ、真砂谷最後の夜をそこで送ることにしました。焚火も豪勢にできて、残りの焼酎を空け、ご飯もお腹一杯に食べることができたのですが、しかし、やはり、シュラフの中に入ると寒くて、その晩も時々、目を覚ましてしまいました。
なだらかな尾根を両岸に見ながら、河原を進んでいきます。もういい頃というところで、谷から離れ左岸の尾根を登って行くと、山道に出ました。それは花抜峠に続く道で、峠までその道を辿り、そこから小木森谷に続く道から大台林道に出ました。
久しぶりに長く歩いた山行なので、下山では両足の親指の爪が剥がれてしまい、痛くて仕方がありませんでした。そう言えば、沢登りを始めた頃も、このように爪が剥がれたものです。もっともっと沢に入って強い爪を作らなければ、と思いました。