三滝渓に訪れるのは実に3度目だ。2020年10月は、直前の道路が崩壊しており辿り着けず。2度目の2021年11月は積雪と滝の凍結により登攀断念。
3度目の正直で念願叶って登攀することが出来た。詳しいレポは同行者のアサラト妖精に依頼しているので、自分の担当したピッチの滝登攀のみ綴る。
2017年に当会のメンバーが三滝渓に訪れ、千丈滝を登攀している。ある程度の情報は聞いていたが、話の通りプロテクションが取り難いスラブの滝だった。
橋の上から見るより、真下に来てみれば思ったより寝ている滝で、印象としては難しさは感じていなかった。その為、前人が取ったラインよりも左側から直登を狙った。
理由としては寒かったから水線に寄りたくないのと、そろそろリソールに出さないといけないミウラーのソールを(滑るから)濡らしたくなかったからだ。
取り付きから一直線、ピッチを切る立ち木の真下から登り始める。ホールドは基本は細かいカチ、岩質は御手洗ボルダーよりは全然マシ、フリクションは良好。
途中、ワイドピンチで保持った岩が剝がれた時は肝を冷やしたが、足にしっかり乗れているので特に問題にはならなかった。
良い感じに減ったソールのおかげで剛性は弱いが、思いのままに思いっ切り踏み込めるので登りやすかった。だがプロテクションは取れず、ロープだけを伸ばしていく。
壁面が立ってきてスラブからフェイスに変わる面に差し掛かった。足元を見ると15mほど登っただろうか、落ちたらそろそろヤバそうだなとリスを探すが見当たらない。
仕方なくスカイフックが掛かるフレークがあったので、取敢えず引っ掛けてハンマーで叩くがイマイチ効いてはいなかった。まぁ、落ちたら吹っ飛ぶだろうプアプロ。
フェイス面からは逆層のカンテ状が連続するセクション。自分の組み立てたムーブは、スラブ面からハイステップで強引にクロスハンドからレイバックに入るはずだった。
しかしワンミスで死に繋がるプアなプロテクションでは、どうもそのムーブに入ることが出来ず、何度も試みるも無情に時間だけが過ぎていった。
スラブで足に荷重を掛け続けているので、いい加減に爪先がヨレてきたし、クライムダウンもロワーダウンも厳しいので代替案を試すしかないなと辺りを見渡していた。
千尋谷千尋滝でのフォールを思い出していた。落ちたら死ぬ、死なずとも重大な怪我を負う、それだけは間違いのない事実であり、突きつけられている現状だった。
行き詰っているのに微塵も恐怖が襲ってこない。ずっと呼吸も心拍も安定しているし何故か心地良い。状況は最悪なのに居心地は悪くないのは何故だろうか。
少しだけ岩の声に耳を傾けると、不思議と見えてなかったラインが見えてきた。自分の場所から4mほど右側に残置のリングボルトが見える。
登攀用か下降用かは分からないが、そちらに移動するほか選択肢はなさそうだ。トラバースする前に支点を補強する必要があるので注視すると、ホールドでは使えないポッケがある。
残念ながらカムもナッツも持ち合わせていない。ツキ谷千尋滝でコージさんの使った技術を思い出した。ハーケンの重ね打ち。アングルはないのでユニバーサルを2枚重ね打ち込んだ。
墜落には耐えられないが静荷重には耐え得る強度はあった。精神安定剤には充分で、行き詰まりが嘘のようにリングボルトまで簡単にトラバース出来てしまった。
一体自分は何をやっていたんだと思ってしまう。やはり凝り固まった固定観念からは何も生まれてはこない。クライミングは柔軟な発想が必要だなとつくづく痛感する。
残置を使うのに抵抗があったが、パートナーに不安を与えるよりマシだろうと有難く使わせてもらった。そこから先は何も難しくもなくイージーな登攀で立木まで辿り着いた。
ロープスケール30m弱に対し、取れた支点はスカイフック(プア)、ユニバーサルの重ね打ち(プア)、残置のリングボルト(錆劣化)、DMMテリア(プア)の4支点。
エイダーも携行していたが結局は使わず。惜しむべくは残置を使ってフリーではなくなったことだが、命と引き換えならプライドは簡単に捨てたほうが良さそうだ。
終わってみれば小1時間も壁に張り付いていた。随分と待たせてしまった同行者たちに申し訳のないことをしてしまったなと反省。
特筆すべきことは何もないが、登攀中はこんな感じだったとゆう駄文のレポでした。
あとこういう岩でラープというのは利かないのかなぁ
岩の割れ目ではなく、シワだったときに、打ち込む感じで
墜落には耐えられないけど前進しは使えるみたいな
2017年に私たちは登っていますが、その後すぐ成瀬さんたちが登ってます。
同じ感じでほとんど支点取れずにフリーでのようです。
ちなみに1983年に中下、島村、加納、松元のわらじのパーティが登っていますが、その時は
ボルト連打でした。(溯行15号参照)
はまやさん
登攀グレードとしては簡単なグレーディングやと思います。
ただプロテクションが取れないストレスに耐えれればの話ですがw
ラープ等も極める箇所は殆ど無いですねー。
上手い人は見つけれるかも?
私は最近、ミシンを踏みそうになるのをこらえて登ってるのでフリーは無理です。
Amazonでアルピニストという動画を観ましたが、ふだん落ち着きがない彼が
クライミングになると驚異的な中注力を発揮するのではと思うなぁ
集中力(訂正)
しかし、次から次と計画して生活してると、1年が早いですね。
年を取るというのは、悪いことばかりではなく
年金をもらえるということで来年が楽しみです。
やさしいというのは落ちても止まるという安心感があるからですよね。支点が取れずにザイルを伸ばすのは怖いです。
昔、MCの岩場でハングの上から落ちて、下のカムで止まった。
ビレイしてくれてたコージ君がカムって止まるんですねぇ、と驚いてたけど
効くようにセットしたつもりなんだけど、怖い。
はまやさん
初めて連れて行っていただいたクラックの岩場(MCの岩場)、そんなことありましたね?!
あの時、購入したばかりのカムを使っていただいてN山の方がお手本で登ってくださったのですが、落ちられて3つのカムが次々に外れて尻もち付けれてグランドフォール。びっくりしたのを鮮明に覚えています。あれ以来、カムはあまり信じきれない。その時のカムのスリングは伸びていて、いつも当時を思いだします。ハーケンは、決め方によって確実に止めてくれると思っています。
在れ以来、クラックの岩場に行ってませんが、今年は行くかも(^^)/
昔、広島の三倉という岩場についていったことがあるけど、名張とは違う岩質で手が痛かった。
やなっちが張ったロープを登らせてもらったけど、ワイドクラックというのは初めてで面白かった。
クラックをやる人はカムをいくつ下げて登るから、そろえるまではお金がいるなぁ。。
でもあの岩の中に入り身体をずり上げるというのは沢でも有効だと思いますね。
三度目の正直での完登おめでとう!
千丈滝1ピッチ目はほぼフリーソロに近い状態でのリードとなります。
リードする者は絶対に落ちないという確実な登攀能力が要ります。
日頃のジムトレ、そして岩場でのクライミングがあってこそだと思います。
シブさん
ありがとうございます。
最近はどっ被りの課題ばっかだったので、
スラブは正直不安でした。
登攀中、シブフットを思い出して、
一人で思い出し笑いしてましたw
確かに千丈滝1P目は、絶対に落ちれないですねー。
読んでいてドキドキするレポ、有難う!
登攀自体は易しいが、落ちたらタダじゃでは済まない緊張感。このスラブの滝はほんまに緊張しました。
でも私達の時はフォローのメンバーの印象は案外ケロッとしてたんで少し拍子抜け(^^)。リードした者だけが味わえる感覚ですね!
COZYさん
最近はリードもスラブもご無沙汰だったので緊張感はありました。ボルダーで強傾斜ばっかやってたので、直前の3日間はフェイスばっか練習してました。
登攀グレードは大したことないですが、プロテクション取れないストレスが何とも言えない滝でしたねー。
トップのみが味わえる贅沢な体験ですよね。